インタビュー

あなたの「夢の病院」、教えてください

2009年9月18日

teduka01

——記念すべき第1回のインタビューゲストは
「夢の病院」を、まさに実現させようとしているお二人です。
大胆かつシンプル、明快な設計が話題を呼び、
世界的に活躍している建築家の手塚貴晴・由比夫妻。
チャイルド・ケモ・ハウスが目指している理想の小児がん専門病院は、
手塚夫妻の設計で、本当にかたちになりつつあるのです。
設計ひとつひとつに込められた思いをお聞きしました。

小児病棟で知った、病院の現実と課題

編集部
チャイルド・ケモ・ハウス(以下、チャイケモ)のプロジェクトに関わることになったきっかけを教えてください。
手塚(貴)
チャイケモの理事の方から、電話で『設計をお願いできませんか?』と声をかけていただいたのが最初です。けれど、そのときは本当に建物が建設されるとは思っていなくて……、『やってみようかなあ』程度の気持ちでした。
その後、実際にチャイケモの方々にお会いして、小児がん病棟で実際に起こっていることなどの話を聞いていくうちに、『実はとても深刻な話だったんだ』と気づきました。それなら、私たちとしても、きちんとお付き合いしなければと思い、未定な部分は多いけれど、設計を引き受けることにしました。
編集部
設計すると決めてから、まずどんなことをされましたか?
手塚(貴)
小児がんで入院している患者さんとその親御さん、60組近くに会って話を聞きました。
そこで感じたのは、はっきりとした問題意識です。
小児病棟の病室というのはとにかく狭くて、ベッド1台とたった60センチの空間、合計わずか2畳半。そこには付き添いのお母さんの小さな簡易ベッドがぎりぎり置けるスペースしかなく、隣とは薄いカーテンで仕切られているだけ。
先進国の日本でも、こんな状態で病気を治療している人たちがたくさんいるのだという現実に直面して、『これはなんとかしなければ』と強く思いました。
手塚(由)
ちょうどそのころ、私たちの子どもが肺炎で約1週間入院したんですね。たった1週間でしたが、その大変さは身にしみて味わいました。
小児がんの場合は、もっともっと大変ですよね。無菌室に入院するときには、付き添いのお母さんも出入りに慎重になります。そうなると食事の時間もとりにくくなったり、コンビニで間に合わせるような偏った食生活になったりもします。そんな日が続いて、お母さんの体調が崩れてしまうことも多いとか……。
編集部
病気で入院しているのに、病室の環境によって、子どもにもお母さんにも悪循環が生まれるというわけですね。
手塚(由)
そうですね。だから今回の設計では、まずは病室のきゅうくつさを解決することが一番大切なことだと考えました。生活の中心の場所としての病室を最優先にしようと。あとは最低限の施設でいいのではないかと思ったんです。

teduka05
手塚(貴)
これはたとえ話ですが、ある場所に温泉が湧いたとしましょう。
その施設を設計するときに、『温泉があるなら休憩室もほしいね。休憩室があるならマッサージルームも。その隣には遊べる部屋を……』なんてことを考えていると、肝心な温泉スペースが小さくて、建物ばかりが巨大な温泉施設が完成してしまいますよね。
それとよく似ているのがいまの病院の姿です。
いろんな人がよい病院にしようと考えてつくっているはずなのに、本質よりもまわりのトッピングばかりが目につくような施設ができてしまっているように思います。
編集部
それでは本末転倒なのですね。そんな思いは、どんなふうに設計に生かされたのでしょうか?
手塚(貴)
入院している子どもたちに会うと、みんな『家に帰りたい!』と言っていました。でも、病気の状態でそれは難しいわけです。それならば、『病室が家になればいいじゃないか』と。
“病院”ではなく、“診療所が付いた家”をつくろうと思いました。

コメント

メールアドレスは公開されません。

コメント
 

トラックバック

トラックバックはまだありません。

トラックバックURL

現在の寄付総額

1億
1814万
5972円

2015.03.04に
0円を追加いたしました。
※寄付総額は累計です。
 総額は1週間ごとに
 更新いたします。

最近のコメント

    No Responses.

最近のトラックバック

    No Responses.